VPNの基礎知識

中国本土の光回線、電信・聯通・移動の違いは?国際経路(CN2・9929・CMI)とVPNの相性

2017年8月17日

中国の3大プロバイダー电信(電信・China Telecom),联通(聯通・China Unicom),移动(移動・China Mobile)。インターネットサービスを提供する事業者はほかにもありますが、国外への出口(国際通信業務出入口局)を持つのはこの3社だけです。回線を選ぶ基準は「契約できる速度」ではなく、その回線から国外へ出るときに、どの経路を通るかです。

この記事では、3社の最新の契約者数と、各社が国外へ出るときに使う回線(163・CN2、169・9929、CMNet・CMI・CMIN2)をAS番号の単位で整理し、VPNを使う立場からの選び方までまとめます。

中国の「3大プロバイダー」はいまも电信・联通・移动の3社

中国で一般向けに通信サービスを提供する基礎電信事業者は、実は4社あります。4社目は中国広電(China Broadnet)です。2016年5月に基礎電信業務の経営許可を取得し、2022年6月27日に192番号の5Gサービスを始めました。2026年3月末時点の5G利用者は約4,300万で、2026年1月の全国広播電視工作会議では、全国のケーブルテレビ網を省ごとに1つへ統合する「一省一网」の完成が宣言されています。

それでも、光回線を引いて国外へ出るという文脈では、対象は电信・联通・移动の3社のままです。根拠は2つあります。

1つ目は、工業和信息化部(工信部)の統計の書き分けです。携帯電話の利用者数は「三家基础电信企业及中国广电」(3社と中国広電)で集計されていますが、固定インターネットブロードバンドの利用者数は「三家基础电信企业」、つまり3社だけで集計されています。規制当局自身が、固定回線の事業者を3社として扱っています。

2つ目は、国外のインターネットにつながる「国際通信業務出入口局」の許可先です。後述する2024年7月の増設でも、許可を受けたのは电信・联通・移动の3社だけでした。国際インターネットへの出口を持つのは、いまも3社です。

かつては长城宽带や艾普といった民営のブロードバンド事業者もありましたが、艾普は2017年12月から各地でブロードバンド事業からの撤退を告知し、长城宽带も、2020年9月に親会社の鹏博士が长城宽带を含む子会社4社の全株式を計100万元で譲渡すると発表しています。铁通は2008年の電信再編で移动に統合されました。

北方は联通,南方は电信?

中国に長くいる人は「北方は联通,南方は电信」というフレーズを聞いた事があるかもしれません。中国で南北を分ける境界は、よく言われる長江ではなく秦嶺—淮河線(秦岭—淮河线)です。1908年に張相文が提唱した線で、1月の平均気温0℃の等温線と年降水量800mmの線がほぼ重なり、気候・河川・植生・農業がここで切り替わります。この線より北を北方、南を南方と呼びます。インターネットに関して、一般的には北方は联通が強く、南方は电信が強いと言われています。

理由の一つは歴史です。通信事業を分けた際、北方は网通という会社が担いました。北方の大部分のシェアを持っていた网通が、2008年の電信再編で联通と合併したため、北方は联通が強いとされています。

一方で、中国で発展している都市は沿海部と南方に集中しています。上海、杭州、広州、深圳、海口、成都、重慶などです。电信は中国のインターネット構築の初期から光回線網を整備してきた事業者とされ、利用者は沿海部の都市と内陸の大都市に多く集まっています。そんな理由から、北方は联通,南方は电信と言われるようになったと考えられます。

ただし、有線ブロードバンドの契約者数で現在1位なのは移动です。「北方は联通,南方は电信」は設備と歴史の話で、契約者数の順位とは別の話です。

3社の契約者数(2026年6月末時点の最新公表値)

各社が2026年8月に公表した中間報告(联通の固定ブロードバンドのみ2025年通期の業績)と、工信部の統計による数字です。

事業者 固定ブロードバンド モバイル(うち5G)
移动 3億3,700万戸
(家庭・企業向けと専用線を含む)
10億1,100万
(6億8,700万)
电信 2億128万戸 4億4,243万
(3億2,250万)
联通 1億2,900万戸超
(2025年末)
5G 2億4,851万

表を読むときの注意点が3つあります。

1つ目は、移动の固定ブロードバンドの数字は定義が広いことです。移动が公表している「宽带联网客户」には、家庭向けブロードバンドのほか、企業向けブロードバンド、インターネット専用線、データ専用線が含まれます。电信の「有線ブロードバンド」とは口径が異なります。

2つ目は、联通は固定ブロードバンドの単独値を四半期ごとに公表していないことです。最新の単独値は2025年通期の業績にある1億2,900万戸超です。联通は代わりに、モバイル・固定ブロードバンド・固定電話・IoT・専用線を合算した「接続利用者数」を公表しており、2026年6月末で約13億1,080万(うちIoT接続が約7億7,261万)です。IoTを含む数字なので、他社のモバイル契約数とは比べられません。

3つ目は、各社の数字を足しても工信部の合計と一致しないことです。工信部による3社合計の固定インターネットブロードバンド利用者は、2026年6月末で7億100万戸、7月末で7億200万戸です。各社の口径が違うため、合計は工信部、個社は各社の公表値、と分けて読む必要があります。各社の公表値を工信部の合計で割ると、目安として移动はおよそ半分、电信は3割弱、联通は2割弱です。

なお工信部の統計では、2026年7月末時点で固定ブロードバンドの95.6%が100Mbps以上、37.1%(約2億6,000万戸)が1000Mbps以上の契約です。家庭の光回線でギガビットは珍しくなくなっています。ただし中国の家庭用光回線は、上りの帯域が下りより大幅に小さい契約が一般的と考えられ、契約速度の数字がそのまま国外向けの体感速度になるわけでもありません。ここから先は、その国外向けの経路の話です。

电信 (ChinaTelecom)

China Telecom logo

电信は中国のインターネット構築の初期から光回線網を整備してきた事業者とされます。有線ブロードバンドの契約者数では移动に首位を譲っており、2026年6月末時点で2億128万戸(前四半期から28万戸減)です。

国際帯域(中国国外のインターネットへ接続するための帯域)は、电信が最大とされています。ただし工信部は国際帯域の事業者別の内訳を公表していないため、他社との差がどの程度かは分かりません。电信は国内外の企業や政府機関などとも契約しており、国際回線の利用者を多く抱えているとされています。そのため、一般の利用者に回ってくる国際帯域は、夜間などの混雑時に不足しやすいと考えられます。

国外への出口は、30年ぶりに増設が決まった

帯域の配分だけでなく、国外へ出る物理的な出口の数も限られています。

工信部はこれまでに計30の国際通信業務出入口局を認可してきましたが、国際インターネット業務を担っていたのは、1994年に中国がインターネットへ全面接続して以来、北京・上海・広州の9局(3社×3都市)だけでした。

2024年7月10日、工信部は3社に対して、南寧・青島・昆明・海口の4都市への計6局の設置を批准しました。北京・上海・広州以外で国際インターネット業務を担う出入口局が認められたのは、30年で初めてです。

事業者 従来の出口 2024年に批准された出口
电信 北京・上海・広州 昆明・海口
联通 北京・上海・広州 青島・海口
移动 北京・上海・広州 南寧・海口

海南は、北京・上海・広東に続いて3社すべての出入口局がそろう4番目の省になります。ただし批准は設置の許可で、新しい出口は順次整備が進められている段階です。青島では出入口局の整備が進められています(2026年3月時点の報道)。なお香港は一国二制度のもとで本土とは別のインターネット管理下にあり、この出入口局には数えません。

出口が限られている以上、国外向けの通信は時間帯によって混みやすくなります。中国の回線からVPN接続の速度が出にくい理由の一つは、ここにあると考えられます。

163とCN2 ― 同じ电信でも国際経路は2つある

电信の国際回線は、大きく2つのネットワークに分かれています。

163(ChinaNet・AS4134)は、电信の一般的な基幹網です。家庭の光回線から普通に国外へ出ると、まずこの経路を通ります。tracerouteで202.97から始まるIPアドレスのノードが見えたら、163の基幹網を通っています。利用者の多さから、夜間の混雑が大きい経路とされています。

CN2(AS4809)は、163とは別に構築された电信の次世代ネットワークです。163が一般道なら、CN2はその上に敷かれた高速道路にあたります。CN2には2つのグレードがあります。

  • CN2 GIA:国内区間から国際区間まで、全区間をCN2のノードで通ります。IPアドレスは59.43から始まる帯域です。
  • CN2 GT:国際区間だけCN2を通り、国内区間は163のままです。国内側が混めば、その影響を受けます。

同じ「CN2」でも、GIAとGTは品質が異なるものとして区別されています。かつてCN2は中国系企業や関係企業に限って開放される回線だったとされますが、現在はCN2 GIAが海外のVPS・サーバー事業者を通じて流通しており、個人でも「CN2 GIA回線のサーバー」という形で使えます。ただし、中国国内の家庭向け光回線としてCN2を直接引けるわけではありません。国外側の事業者が調達した回線を、サーバー経由で使う形です。

VPNでも考え方は同じです。VPN.ACなどの中国対応VPNを使う場合も、电信回線から接続するなら、CN2回線を持つサーバーを選ぶと安定しやすいと考えられます。

联通 (ChinaUnicom)

1200px China Unicom svg

联通は光回線で电信に次ぐ規模を持つ事業者です。ブロードバンド利用者は1億2,900万戸を超えています(联通が公表した2025年通期の業績)。工信部の2025年末の3社合計6億9,100万戸に対して、2割弱のシェアです。北方でのシェアが高く、この地域では網も厚いとされています。一方、南方は歴史的に电信の牙城で、联通の設備投資が相対的に薄いとされ、同じ联通でも北方と同じ水準の品質は期待しにくいと考えられます。

169網とAS9929

联通の国際回線も、电信と同じく2つのネットワークに分かれています。

169網(China169・AS4837)は联通の一般的な基幹網で、IPアドレスは219.158から始まる帯域です。家庭の联通回線から国外へ出る通信は、基本的にこの経路を通ります。国際帯域は电信に次ぐ規模とされる一方で、固定ブロードバンドの契約者は3社で最も少ないため、一般の利用者が国際回線で受ける混雑の影響は相対的に小さいと考えられます。

AS9929(CUII・China Unicom Industrial Internet)は、网通の設備を引き継いだ联通の精品網で、「联通A網」とも呼ばれます。电信のCN2 GIAに近い位置づけです。主に法人向けのネットワークですが、CN2 GIAと同じく、海外のVPS事業者を通じて個人でもサーバー側の回線として使える形で流通しているとされます。家庭向けの光回線として9929を契約できるわけではない点は、CN2と同じです。

住んでいる場所と使うVPNによりますが、北方在住でVPNを多用する人には联通が有力な選択肢です。VPN.ACのようにサーバーの選択肢が多い中国対応VPNなら、自分の回線でつながりやすいサーバーを選び分けられます。

移动 (ChinaMobile)

China mobile logo

かつては「光回線ではあらゆる面で电信、联通に劣る」と言われていましたが、2008年に铁通の固定網を統合し、その後の5G・ギガビット光回線への大規模な投資を経て、固定ブロードバンドの契約者数で首位に立ちました。2026年6月末時点で、家庭・企業向けブロードバンドと専用線を合わせた「宽带联网客户」は3億3,700万戸(2025年末から770万戸増)です。モバイル契約は10億1,100万、うち5G利用者は6億8,700万です。

CMNet・CMI・CMIN2

移动の国際回線は、3つのネットワークに分けて見る必要があります。

  • CMNet(AS9808):移动の一般的な基幹網です。家庭の移动回線から普通に国外へ出ると、この経路を通ります。
  • CMI(AS58453):香港を拠点とする移动の国際子会社、中国移動国際(China Mobile International)のネットワークです。移动の国際接続の中心を担ってきました。
  • CMIN2(AS58807):CMIが運用する、従来のCMI網(AS58453)とは別の国際精品網です。电信のCN2 GIA、联通のAS9929に相当する位置づけで、海外のVPS事業者でもCMIN2回線のサーバーを扱うところが出てきています。

电信・联通と同じく、移动も「家庭の回線から普通に出る経路」と「精品網を持つサーバーを経由する経路」とで、国外への通り方が変わります。移动の回線で国外向けの品質を上げたいなら、使うサーバーやVPNがどの回線を持っているかまで含めて考える必要があります。

なお、インフラの歴史的な経緯から、一部の中国国内向けサイトへの接続は电信・联通に劣る場合があるとされています。

3社の国際回線をAS番号で整理する

ここまでの内容を、AS番号の単位で1つの表にまとめます。tracerouteやBGPの経路情報で自分の通信がどこを通っているかを確かめるときにも使えます。

事業者 一般の基幹網 精品網
电信 163(AS4134)
202.97系
CN2(AS4809)
GIAは全区間59.43系
联通 169(AS4837)
219.158系
CUII(AS9929)
移动 CMNet(AS9808) CMI(AS58453)
CMIN2(AS58807)

3社とも、家庭の光回線から普通に出れば左の列、精品網を持つ海外のサーバーを経由すれば右の列の経路になります。精品網はいずれも家庭向けの契約で直接引けるものではなく、海外側の事業者が調達してサーバーやVPNとして提供するものです。

中国から国外へ出る3つの経路 ― 個人VPN・法人IPLC専用線・国内CDN

ここまでは「どの光回線を引くか」と「その回線がどこを通って国外へ出るか」の話でした。中国向けにサーバーを置きたい、IP-VPNを引きたいという場面で出てくる選択肢は、個人向けVPNだけではありません。

経路1:個人向けVPN・Shadowsocks系

個人が自分で契約し、手元の端末に入れて使う経路です。申し込んだその日から使えて、料金も各社が公開しています。

ここで見落とされやすいのが、回線側の経路(前述のCN2・9929・CMIN2の差)とGFW側の遮断が別のレイヤーだという点です。片方だけが改善しても体感は変わりません。同じ回線でもプロトコルによって結果が変わる理由はここにあり、詳しくはVPNプロトコルの選び方で扱っています。

経路2:法人向けの国際専用線(IPLC/IEPL)

企業が拠点間を直結するための専用線です。中国国内の拠点と香港・日本などの拠点を、公衆インターネットを経由せずに結びます。公衆インターネットの国際出口を経由しないため、個人向けVPNのような遮断の影響を受けにくいとされています。

法的な位置づけははっきりしています。工信部の「关于清理规范互联网网络接入服务市场的通知」(工信部信管函〔2017〕32号・2017年1月17日)は「未经电信主管部门批准,不得自行建立或租用专线(含虚拟专用网络VPN)等其他信道开展跨境经营活动」と定めています。あわせて、基礎電信企業が利用者へ貸し出す国際専用線については「向用户明确使用用途仅供其内部办公专用,不得用于连接境内外的数据中心或业务平台开展电信业务经营活动」としています。

つまり正規の跨境専用線は、①電信主管部門の認可を受けた基礎電信企業(电信・联通・移动)から借りるものであり、②用途は自社の内部業務に限られ、③国内外のデータセンターや業務プラットフォームをつないで電気通信事業を行うことは認められていません。個人がこの経路を契約できるものではなく、GFWの解除を個人が申請する窓口も存在しません。「グレートファイアウォールに申請・問い合わせをする」という発想が実務上たどり着く先は、この法人向け専用線の契約手続きです。

国際専用線は各社とも料金表を公開しておらず、費用と開通までの期間は個別見積もりで決まります。

経路3:中国国内のCDN・クラウドを挟む

国外のサービスを中国から使わせたい側が取る経路です。中国国内にCDNのエッジやクラウドのリージョンを置き、利用者から見ると国内向けの通信になるように設計します。ただし中国国内でコンテンツを配信するにはICP備案(サイトの届出)が必要で、ドメイン単位の手続きが発生します。個人が自分のアクセスを改善する手段ではなく、サービスを提供する側の設計の話です。

3つの経路の使い分け

経路 契約する主体 個人のアクセス改善に使えるか
個人向けVPN・Shadowsocks系 個人 使える
法人向けIPLC/IEPL専用線 法人(基礎電信企業と契約) 使えない(用途が内部業務に限定)
中国国内のCDN・クラウド サービスを提供する側 使えない(提供側の設計)

まとめ

3社の違いをまとめると次のようになります。

固定ブロードバンドの契約者数 移动 > 电信 > 联通(移动は定義が広い点に注意)
地域の強み 北方は联通、南方は电信が強いとされる
国際帯域 电信が最大とされる(事業者別の内訳は非公表)
精品網 电信=CN2 GIA/联通=AS9929/移动=CMIN2

各社とも、国外向けの速度制限の有無や強さを公表していません。「どのキャリアが海外に強いか」を1本の順位で断定できる材料はなく、国外向けの体感は、キャリアそのものよりも、使うサーバーやVPNがどの経路で国外へ出ているかで決まる部分が大きいと考えられます。

状況別・キャリアの考え方

状況 考え方 理由
南方の大都市に住む 电信が有力 早くから光回線網を整備してきた地域で、シェアも高いとされる
北方に住む 联通が有力 网通の設備を引き継ぎ、北方でシェアが高い
海外アクセスの品質を上げたい キャリアより海外側の回線で選ぶ 精品網は家庭向けに引けず、サーバー・VPN側が持つもの

回線側でできることには上限があります。CN2 GIAも9929もCMIN2も国際区間の品質を上げる仕組みであって、GFWの検査そのものを回避するものではありません。遮断のレイヤーで何が起きているかはグレートファイアウォール(金盾)の仕組みにまとめてあります。

家の外で使う可能性があるなら、契約先が分からない回線(商業施設やカフェのWi-Fiなど)からでもサーバーを選び分けられるVPN.ACのような中国対応VPNを選んでおくと、回線ごとの差に対応しやすくなります。

個人の立場でIPLC品質の回線を使う現実的な方法は、経路2の専用線を自分で契約することではなく、IPLC区間を自前で持つVPN事業者を選ぶことです。個人でIPLC回線を使う選択肢と、香港サーバー経由の実効速度の比較で具体的な中身を扱っています。

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